私が生まれ育った家にはヤブツバキという
冬に花を咲かせる木があります。
花を咲かせた後、秋にかけて実を大きくし、
実が割れて種を落とします。
その種と殻がかわいらしく、部屋に飾っていました。
昨年の秋に、それが椿油の原料になることを知り、
種を集めて作ってみました。
そろそろ今年の実も大きく赤く色づいてきています。
種を天日干しで乾燥させて、殻を割ると
ナッツのような実が出てきます。
細かく砕いてから蒸し、絞ると油が取れます。
完成した椿油は木の小物のメンテナンスに
使いました。
取れた油はほんのわずかでしたが、
そこに至るまでの時間は普段よりゆっくりで
豊かに感じ、自分で作った油でお手入れを
していると、庭にある椿にも小物にも、
より愛着が湧きました。
何気ない日常の中にある豊かさ。
それに目が向くちょっとしたきっかけが
建築やお庭にあったらなと思っています。
忙しい日々の中で見過ごしてしまいがちなものを
拾い上げる、そんな優しい器のような住まいを
考えていきたいです。
