借景

2015.6.15

自然を支配する西洋の考えと違い、日本では自然と共存する考えを持っています。

共存していく方法の一つとして「借景」という造園技法があります。

借景とは、「景色を借りる」というように、庭園外の景色やものを取り込んで構成要因とすることを言います。

 

 

代表的な例として、京都府にある円通寺を挙げます。

円通寺庭園は、苔を主体として庭石が配置されており、

木々の間から比叡山を望むことができる構成となっています。

縁側から見ると刈り込みをした生垣と木々、庇によってトリミングされ、一つの絵のように見えます。

 

ここで、最近訪れた谷口吉生設計の「鈴木大拙館」を紹介します。

敷地は、高低差10mある本多の森の近くで、周囲には美術館や博物館、能楽堂があり

文化施設ゾーンとして成り立っているという特徴があります。

 

3つの棟と3つの庭から成る鈴木大拙館は、回遊することで

鈴木大拙を「知り」、「学び」、「考える」ことを目的としています。

鈴木大拙の思想を体感すると同時に、金沢らしさ(=場所性)も体感することができます。

金沢らしさを体感する要因の一つとして、本多の森を借景していることを挙げます。

錆石が積まれた壁の上部に広がる緑。

錆石を一段減らすかどうするか悩まれたそうです。

水鏡に映る緑など、季節の移ろいと共に様々な表情を見ることができます。

 

借景を通して、その場所に合った建物をつくらなければいけないと再認識させられます。

敷地条件を活かしてそこにあるべき建築の形をつくっていければと思いました。

 

by Yokoyama