秋野不矩美術館
2015.3.17
浜松市天竜区二俣の町を見下ろす小高い丘に、秋野不矩(あきのふく)美術館はあります。
丘の上を切り取って建てたような外観 自然素材の良くも悪くも経年変化の味わいがあります。
建物の設計者は、秋野不矩さんご本人が指名されたという藤森照信氏。
建築史研究の分野では名の知れた建築史家であり、また自然素材を大胆に使う建築家でもあります。
この美術館の最大の特徴は「靴を脱ぐ」こと。
秋野不矩さんの絵の汚れのなさと清浄感には土足は似合わないと、藤森氏が提案されたそうです。
来館者はエントランスで靴からスリッパに履き替えて入館し、展示室前ではスリッパを脱いで奥へと進みます。
廊下の土間も靴無しで歩きます。 藤ござが敷かれた展示室。当然素足です。
大理石の床は蓄熱式床暖房でここちよいです。
第1展示室は廊下のように長いスペースに籐ゴザが敷かれ、そのやさしい感触に思わず気持ちが和みます。
さらに奥へと進み、メインの第2展示室にたどりつくと、
畳大の白い大理石がそれこそ和室の畳み敷きのように一面に敷きつめられています。
実際、床に座ってくつろぎながら作品を眺めてもらうことを想定し、
作品は通常の美術館より低い位置に展示されています。
靴を脱ぎ、足下から伝わってくる自然素材の質感を楽しみながら作品を眺める贅沢な空間です。
住宅にも同じ事が言えると思うのですが、視覚ではなく空間を肌で感じることは大切です。
無垢フロアなどは素材の表面に目には見えづらい凹凸があり、
裸足で歩くと足の裏にまとわり付かない気持ち良さを感じます。
インテリアの世界では体に触れる素材は、
吟味して使う事がその空間の質感に強い影響を与えると言われています。
お客様には是非モデルハウスや見学会を通して建物に触れて頂く事をお勧めします。
by Shinmei