場所の多様性
2019.8.16
住宅設計にまつわる好きな言葉があります。
「住宅に必要なのは、健やかなるときも病めるときも
そっと包み込んでくれる寛容さと、
その心身に寄り添う多様な居場所である。」
最近、その言葉を実感する機会がありました。
神奈川県 大山にある茶寮をご存じでしょうか。
建築家・堀部安嗣氏の設計です。
美味しい食事やコーヒーを楽しむための空間は、
段階的に分かれています。
まず、青空にもっとも近いテラス席。
そして、木陰にいるかのような縁側と、
屋根にひらっと覆われただけのような開放感ある
テーブル席。
もっとも奥に位置するのは座敷です。
訪れる前は、テーブル席が一番気持ち良さそうに
感じました。
「この席に座ろう」
そう心に決めて大山を登っていたのですが、
想定外、心地良く感じたのは奥の座敷でした。
穴ぐらの中から美しい外を眺めているような、
守られている安心感がありました。
しかし、次訪れるときは別の席を選ぶかもしれません。
朝一番の清々しい空気を楽しみたいとき
元気いっぱい陽の光を浴びたいとき
誰かと向き合い大切な話をするとき
心が雨模様で前を見れないとき
訪れるたびに違う場所に腰掛け、違う気持ちで、
この景色に向き合うのだと思いました。
場所を選択するという行為は、日々過ごす
住まいにおいても大事なことのように思います。
心や体がいろいろな状態にある人を受け入れる、
寛容で愛ある住まいを探求したいです。
by Ogawa