引用

建築家として、もっとも、うれしいときは、
建築ができ、そこへ人が入って、

そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。

日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、
家の中に明るい灯がついて、
一家の楽しそうな生活が感ぜられるとしたら、

それが建築家にとっては、
もっともうれしいときなのではあるまいか。

家をつくることによって、そこに新しい人生、

新しい充実した生活がいとなまれるということ、

商店ならば新しい繁栄が期待される、
そういったものを、
建築の上に芸術的に
反映させるのが、私は設計の仕事だと思う。
つまり計算では出てこないような人間の生活とか、
そこに住む人の心理というものを、
寸法によって
あらわすのが、設計というものであって、
設計が、単なる製図ではないというのは、
このことである。

『朝日ジャーナル』 
一九六五年七月十一日号 吉村順三談

引用

土地にあった設計こそ本物の建築。

目の前に建つ大きなビルやマンション。

開放的な家は心地良いですが、
周囲の視線が気になっては

ゆっくりと落ち着いた暮らしはできません。

暮らしやすさのための導線、
それぞれの空間での過ごし方、

そこから見える景色など、あらゆる角度から考え

可能性のあるプランはすべて描き出します。

100点満点の土地などない。

北向きならば北向きに合わせた設計を、

狭小地ならば小さな空間に合わせた設計を、

その土地に自分の足で立ってみて、

ご家族に合わせた空間、
暮らしを想像しながら設計します。

理想のプランに辿り着くまで、

多い時には20~30枚描き直します。

お客さまにお見せするのはたった1枚でも、

そもそもが、そこでの暮らしが
考えられた良いプランでなければ、

100回描き直しても良いプランにはならないからです。

豊かな暮らしをつくる庭。

日本には四季があります。

窓から見える景色に自然が入ること、

もっと言えば、街中にあっても、

できる限り自然しか目に入らないようにすること。



人々の暮らしを設計する上で、

自然や庭との関係性は大切にしています。

暮らしの中の灯り。

「機能的な灯り」は、キッチンなど

作業の場に合った適切な明るさを提供するもの。

「雰囲気をつくる灯り」は、落ち着いた時を

過ごすためのものです。

暮らしのシーンによって必要な明るさは変わるので、

食事の場では暖かく楽しい雰囲気を、
そして就寝時間が近づくと

徐々に明るさを落としていけるような
照明計画が理想的です。

お客さまと明るさの感覚を共有しながら、

その住宅に適切な明るさをご提案します。

光と風を感じる設計。

暮らしの中にできるだけ自然の光を。

そのために、四季によって変わる光、

太陽の位置を何度も想像します。

そうして自然の光を採りながら、風の道も計算します。

窓から見える景色、差し込む光、風の通る道、

そこでの暮らしや人の心を想像せずに、

設計することはできません。