素材と付き合う

2016.4.5

私は趣味でオーボエという楽器を吹きます。
 
オーボエはとても繊細な木製の楽器で、気温や湿度といった空間条件に音色や音程が左右されます。
それ故、世界一難しい木管楽器とも言われています。
言い換えてしまえば、コントロールのしにくい、気まぐれで「厄介」な楽器ということだと私は思っています。
 

 
約8年前に購入したオーボエ。
購入してすぐの新品オーボエに息を吹き込むと、息の湿気に木が耐えられなくて楽器が割れてしまうので、1日目は10分だけ… 2日目は20分だけ… と少しずつ慣らしていく必要がありました。
これでは全然練習ができません!
 

また、一生懸命練習しても本番の日の気温や湿度が最悪で、演奏までに調整できず良い演奏が出来なかったこともあります。
 

苦い思い出やフラストレーションが溜まる、本当に厄介な楽器だなと思っています。
 

けれど、なぜか嫌いにはなれないのです。
きっとオーボエがもっと簡単な楽器だったらすぐに飽きてしまっていたでしょう。
多少厄介で扱いづらいけれど手間をかけた分、可愛いのです。
また、自分の楽器を他の人が吹くと、息の入れ方に抵抗感を感じると言います。
それは、年月を掛けて素材が使い手に馴染むように歩み寄ってくれているからです。
 

こうやって、素材と歩み寄りながら長く付き合っていく感覚は何だか良いなってしみじみ思います。
 

by Kikuchi