言葉で表すこと

2019.4.12

先日、仕事終わりに空を見上げると
朧月の出ている夜でした。
靄の中にやわらかく光る春の月と、
暗闇から白く浮かび上がる雪の残る山々。
季節の変わり目を感じつつ、思い出したのは
ある友人との会話でした。
 

 
学校の帰り道、「おぼろづき?」と聞き返した友人の
生まれたベトナムという国には
朧月という表現はなく、
春の夜にぼんやり光る月を表すのに、
日本には朧月という言葉があるということに
とても感動したといいます。
言葉で表すことと、それが伝わることの楽しみを
知った出来事でした。
 
日々の中で、私自身も様々な言葉と出会うため、
料理研究家さんの日記や子どものつぶやき集、
画家の詩集などを読むことがあります。
料理研究家さんの日記にはその日の天気が
「静かな雨」の日や「薄い晴れ」の日など、
様々に書かれていたりして、あんな感じのときかな、
などと
過去に見た風景を思い出しながら
読むのも楽しいものです。
 

 
ある画家さんの詩集では、ほとんど余白を残した
白い紙の上に
文字が丁寧に並んでいました。
紙の上で、文字となった言葉の漢字だったり
ひらがなだったりといった一字一句が、
同じ音でもまた違った印象を与えてくれます。
 

 
建築が景色を切りとって私たちに見せてくれるように、
言葉もまた今居る景色を切りとって新しく、
時には懐かしい眺めを
私たちに見せてくれる力を
持つものだと思います。
私たちが住まいを考える時、プレゼンテーションとして
伝える時、
形だけではなく、設計士としてどんな言葉を
織り交ぜて伝えることが
出来るのかを考えるのも、
楽しいひと時だと感じます。
 
by Yanai