ふるさと

2017.8.21

先日ある建築家さんの講演にてとても興味深いお話をお聞きする機会がありました。

 

それは、「人が懐かしいと思う瞬間は、前を向いてこれからのことを考えている脳の状態を示す」という話で、建物あるいは建築というものは人、文化、記憶といったもの継承するものであり、新しい建物であってもの、昔からそこにあるかのようなデザインは、記憶を継承するすばらしい建築であるということをお聞きして、「なるほど。」と感心させたれました。

 

そう強く感じたのは、講演の中で、私の故郷に程近い「馬籠宿」の古い町並みの写真を使って紹介された、車ではなく人のために作られた道と私有地との境界線のあいまいさが、現代の町並みにはない豊かさを感じさせるという話でした。

 

その写真をみて、懐かしさを感じ、しばらく訪れていなかった「馬籠宿」を訪れることにしました。

 

数年ぶりに訪れた「馬籠宿」は以前に訪れた時と大きく変わることなく、昔ながらの佇まいを残したままで、以前に訪れたときは建築を仕事にする前だったこともあり、そのときでは気がつかなかった馬籠宿の建築的な魅力を改めて実感させられました。

石畳、瓦屋根、土壁、格子、土間、水路、鎖樋、緑、苔、

 

古い町並みに懐かしさを感じつつ、町並みを構成するひとつひとつのディテールに職業柄、目を奪われました。

 

 

さらに、馬籠宿は島崎藤村の生誕の地であり、「藤村記念館」が生家跡地に立てられています。建築家の谷口吉郎氏によって設計され、地元の人々の奉仕によって立てられた記念館は質素な木造建築でありながら、庭と回廊型の展示室の関係性が非常に魅力的だと改めて実感させられます。

 

昔ながらの佇まいを残す馬籠宿を懐かしいと感じる中で、一つ大きく変わったと感じたことがありました。それは、外国人観光客が本当にたくさん訪れていたことです。

 

故郷の懐かしい町並みが外国人の方々にとっても魅力的な空間として認識され、世界中の人々が訪れる場所に変わっていたことに本当に驚かされました。

 

 

その帰り道、田んぼの稲が真夏の雨に打たれ、より一層鮮やかな緑色となり、気持ちの良い田舎の風景を見せてくれました。

 

懐かしいと感じる故郷の魅力を再認識する充実した夏の休日となりました。

 

by fujikawa