余白のような時間

2017.9.4

石川県にある、「べにや無何有」という温泉旅館。

前から気になっていて、いつか行ってみたかった旅館に、

子供が産まれる前に思い切って宿泊してきました。

 

 

温泉旅館やリゾート施設を訪れると、リノベーションによって新たな趣きに再生され、以前にも増して人気になっている事があります。この宿もその形態のひとつで、建築家の竹山聖さん、グラフィックデザイナーの原研哉さんが手を合わせ再生された宿でした。テーマとなっているのが、「からっぽのなかの豊かさ」という言葉で、一見何の役にも立たないと思われるものほど、実はすごく豊かな存在である、という意味です。

 

 

「ぽっかりあいたスケジュール表の余白のような時間」

余計なものが無く、贅沢で豊かな時間を、この宿全体で感じさせてくれました。

ロビー、客室、食堂、どれもゆとりのある大きな空間で、一見無駄に見えるスペースや天井高が、宿泊者に非日常を感じさせ、心が解き放たれます。

 

 

部屋に設けられた屋根付きのテラスでは、ハンモックに揺られながら、ついうたた寝をしてしまいました。館内に飾られた一輪挿し、木で作られた案内表示、食事用のYチェア、デザインされたアメニティー、作り込まれたパンフレット、どれをとってもシンプルでセンス良く、上質にデザインされたものばかりでした。

 

 

そんな中、更に関心する事がありました。それは、スタッフの方々の対応でした。食事の世話をして下さった方は、かしこまりすぎず、とても気さくに話しかけて下さり、他愛もない会話で和ませて頂きました。おそらく緊張感をほぐし、よりリラックスして心穏やかに過ごして頂こうという、おもてなしと感じました。スタッフさんの制服も、ほんのりと和を感じる優しい生地感で、宿泊者が感じる気持ちまで考え、デザインされたものでした。豊かさについて気づかされた、今までで一番心地よかった宿泊体験でした。こうした体験を、普段の設計に落とし込み、豊かさについて考えてもらうきっかけを作る事が、私たちの役割なのかなと感じております。

 

by yamada