自然をきりとって使うこと

2017.11.6

 

「今年は多いぞ」「早そうだな」

 

この季節になると、「こんにちは」の次に飛騨で交わされる話題。
雪のことです。

 

 

カメムシが多いから
カマキリの巣が高いから
雪虫が飛んだから

 

言い伝えのような、都市伝説のような、
そんな雪予想の指標をみなそれぞれ持っていて、
予想したり、相手の予想を聞いてみたり。

 

飛騨に住んでもうすぐ2年。
去年はこんな会話がピンと来なくて不思議な気持ちで聞いていた私も、
ひと冬を越して、やっとその境地がわかるようになりました。

 

それだけ、雪が日々の生活に与える影響が大きく、
また、人はそれに対して、予測し、備えることしかできないのです。

 

 

飛騨の人は、自然に対し、しなやかです。
あらがいようのない力に対し、
そなえ、いなし、折り合いをつけ、
そして厳しさとひきかえに与えられる美しさを楽しんで
暮らしているように感じます。

 

住宅をつくるとき、
私たちは、その美しさや豊かな表情に魅せられて
「自然素材」を取り入れます。
そして、ときにその扱いの難しさに苦悩します。
フローリング一枚でも、小さいけれど、
あらがいようのない「自然」そのものなのだと実感します。

 

 

当然、リスクを嫌い、
自然素材を排除していく方針をとる企業もあります。

 

しかし、飛騨に生きる人たちのように、
知り、そなえ、折り合い、
そして美しさを享受していくことができれば、
豊かな命の表情のある住宅を、
つくっていけるのではないかと思います。

 

「こんなものを見せてもらえるなんて、
 飛騨の自然は本当にありがたい。」

 

雲海が見える展望台で出会った、
地元の方のことばが心に残っています。

 

 

by k.shimizu