居心地を知る人
2018.10.26
3月の晴れた日。
午後3時頃、川辺を歩いているとおじいさんが一人大きな石に座って本を読んでいました。
その姿を羨ましく思い、遠くからしばらく眺めて、
次の春までは待ちきれず夏に真似をしてみました。
ですが、やっぱり夏は少し違いました。
冬と春の間の柔らかい日差しと、誰もいない静けさの中に流れる川の音。
程よく温められたぬるい石の上。
一人本を読むのに居心地の良い場所と時間を、おじいさんからひとつ教わった気がしました。
それから、なんだか心地よさそうな所に居るな…
と思う人を見つけると時々手帳にメモを残すのですが、
・1月の13時頃、
植物でいっぱいのベランダで一人椅子に座って、
ラジオとポカポカを楽しむ人。
・4月の朝、歩道橋の上で深呼吸をする人。
・6月の昼近く、公園の丘の上。
小さな木の影に一人、
胡座をかいて居眠りをする人。
など。
どんな人だったかを思いかえすと、
なんとなくですが、私が見つける人の中には年配の方が多い気がします。
長く生きていると、おいしいものを沢山知っているかのように
心地のいい場所も沢山知っているのでしょうか。
そんな人達の居る心地よさそうな場所はお洒落や流行りという感覚で選ばれた場所ではなく、
猫が窓辺で日向ぼっこをするように気取らず本能的にただそこに居るのが心地よいから
身を寄せてしまった場所なのだろうと思います。
本当に居心地の良い場所とはどこにあるのか。
実体験も好きですが、時にはそれぞれの季節を過ごす一人一人を眺めながら考えてみたいものだなと、
メモを読み返して思いました。
by Yanai