記憶と建築
2019.1.4
名東モデルは少し前からライトアップを行っています。
道ゆく人がその足を少し止めて、楽しんでいただけている姿を見ると、
こちらまで暖かな気持ちになります。
毎朝、外の掃除をしていると、
「ひと休みさせていただいてもよろしいですか?」と、
かわいい子犬と一緒に散歩をされているひとりの女性に、
よく声をかけていただきます。
女性は外のベンチに腰掛けて、子犬をひざに抱き寄せ少し休んでから
「ありがとう」といって、また散歩に戻っていかれます。
ある日いつものように
「ひと休みさせていただいてもよろしいですか?」と外のベンチに腰掛けられました。
ただ、ひざのうえに抱きかかえられていたのは、いつものかわいい子犬ではなく、
同じくらいの大きさのかわいい子犬のぬいぐるみでした。
「ここでひと休みするのが、あの子も好きだったから」
そして、静かにベンチでたたずまれたあと
「また来てもいいかしら?」といい、散歩に戻っていかれました。
建築は人の記憶を繋ぎとめてくれる存在でもあります。
かわいい子犬との記憶を呼び起こすそのときの、
美しい思い出のワンシーンにもなっているのだとそう考えるとき、
うれしくもありその責任も憶えます。
ふとこのベンチをみたとき、私も思い出します。
ベンチに座った女性の膝のうえで、楽しそうに戯れるその子犬の記憶を、この建築と共に。
by hatakeyama