記憶の宝箱

2019.7.26

少し暗い話になりますが、
今年の正月、祖父が自宅で息を引き取りました。
 
病気を患っていましたが、
入院をしなかったのは少しでも長く
家で過ごしたかったからでしょうか。
 
自宅から斎場へ祖父を運び出す際、
「おじいさん、家を出ますよ」と何度も棺に
話しかける祖母の姿が忘れられません。
 
祖父は寡黙な人でしたので私はあまり話した記憶が
ありませんが、
祖母は「おじいさんはこの家が本当に
大好きだった」と寂しそうに言っていました。
 

 
歳を重ねるに連れ、祖父母宅に訪れる機会は随分
減っていましたが、
子供の頃はよく遊びに行って、
折り紙や縫い物を教えてもらったことを
ふと思い出しました。
私の親にとっては自分の育った場所であり、
私の知らない記憶がたくさん詰まった空間だと
思います。
 
今回の経験を通して、
家にはたくさんの思い出が
培われていくものだと強く感じました。
まるで、思い出の詰まった宝箱のようです。
小さな傷一つでもそこで過ごした記憶が染み付いて
います。
 
毎日思い出が刻まれていく空間、
誰かにとっての大切な居場所をつくるこの仕事に
改めて誇りを感じました。
 
by Nagino