とどまりたくなる場所

2020.2.7

旅先の街で、ふいに素敵な広場に出会うと、
自分だけのとっておきのものを見つけたような
うれしい気持ちになります。
 
人がとどまらなければ、ただの空き地である空間で、
なにか建物を建てるわけでなく、露店を並べる
わけでもないのに、
お互い見ず知らずの人たちが、
なぜかそこにとどまる場所。
そこには、普遍的な居心地の良さがあるのだろうと
思うと、
なにか目に見えない、とても魅力的な
しかけがあるように感じるからです。
 

 
小布施の小布施堂というお店の奥の広場も
そんな場所でした。
街道に面したお店の隣りに立派な門があり、
それをくぐると、趣のある建物と庭に囲まれた
小さな円形の広場が現れます。
周囲の建物はカフェやレストランで、
奥のお店につながる小路もあります。
門の奥にそんな広がりがあることが意外で、
町屋の中庭を見たような高揚感がありました。
お店を利用する人がメニューを見ていたり、
席待ちをしていたりしますが、
ただお庭を楽しむ人や、
ベンチで休憩する人たちがいてもいい、
とても心地よい空間でした。
 

 
イタリア旅行で訪れた、シエナという街の
カンポ広場も、記憶に残る場所でした。
古い街並みが残る旧市街で、6、7階建ての
石造りの建物のあいだを抜けると、
急に扇形のとても大きな広場が広がります。
朝も昼も夜も、びっくりするくらい多くの人が
石畳の広場に座ってくつろいでいるのが印象的でした。
扇形の中心に向かって緩い勾配がついているので、
とても腰を下ろしやすく、自然とみな同じ方向
(下がっていく方)を向くので、
隣にいる人たちと絶妙な距離感が生まれます。
地べたに座る習慣のない日本人も、
迷いなく座ってしまう魅力がありました。
 

 
こうして見てみると、
とどまっていたいと思う広場には共通点があって。
狭いアプローチを通ってたどり着くこと。
広場を包み込むように建物が建っていること。
地面に中心と思える場所があること。
 
そんな普遍的と思えることを見つけて、
それを空間の作り方として、
家づくりの中に
こっそりちりばめていくことが、楽しみなのです。
 
by Shimizu