電灯が無かった時代のいえ
2021.3.26
11月初旬、石川県能登半島の輪島にある
時國家邸宅 (下時國家) を見に行きました。
下時國家邸宅は江戸時代中期に建てられた
格式の高い木造平屋建ての民家で、
国指定重要文化財に指定されています。
日本の生活に電灯が登場したのは
長い鎖国の時代が明けた
明治時代と学習しておりますが
都市部から離れた田舎の隅々の
庶民の生活の中まで電灯が普及したのは
おおよそ戦後の話だそうです。
江戸時代に建てられた時國家邸宅には
勿論照明計画なんて概念は無く
昼間にもかかわらず薄暗い内部は
現代の生活を営もうとすると、
少々無理があるかもしれません。
でも決して真っ暗闇で困る感じではなく、
目が慣れてくると色んな事が見えてきます。
庭と呼ばれる土間の荒い陰影
格子の繊細さ
鈍く照る黒漆喰の竈(かまど)や
さっきまで気が付かなかった、
細々と燃える囲炉裏の炭
暗闇の奥にみえてくる茅葺屋根の裏側
挙げたらキリが無いほど見えてくる
数々の美しさ。
染み込むように入る淡い光に尊さを感じ
縁側の奥に見える景色の眩しさに
目を奪われます。
江戸時代の古民家から照明に頼らない
明かりの嗜み方を教わりました。
日々の暮らしの中で
自然と感性が磨かれることが
心の豊かさにつながると思っています。
住まいのご要望をかなえるたけではなく
そういった仕掛けを考えることも、
私たち建築士の仕事です。
Kikuchi