椿の庭

2021.7.9

先日、「椿の庭」という映画を見ました。
写真家の上田義彦さんが初めて撮った映画です。
 

 
映画には写真の閉じ込められた時間では表現できない
移ろいと喪失感がある、と上田さんの話があるように、
古い一軒家で亡き夫との思い出と共に暮らす
絹子とその孫娘である渚の暮らしが
お庭を通して丁寧に映されています。
 
映画の中で、絹子と渚は相続税の関係上
古い家を手放さなければならない状況に
なってしまいます。
「記憶は場所や物に宿っていて、
この家から離れてしまうとここであったこと、
家族の記憶もすべて思い出せなくなってしまうのか」
と考えた絹子は病気の治療を止め
家と時を同じく亡くなってしまいます。
 

(出典 椿の庭 https://bitters.co.jp/tsubaki/about/)

 
家より先に亡くなる人、家と共に亡くなる人、
家が先に亡くなる人。
それぞれの登場人物にとって記憶の拠り所と
なっている住まいの存在を見て
「空間をつくることは、時間をつくること」
という言葉を思い出しました。
設計を学んだ先で教わった言葉であり、
そんな仕事がしたいなと思えた言葉でもあります。
 
目に見て分かりやすい物や
居場所からできる住まいの中に、
いつか記憶となってくれるような時間も想像しながら
日々設計していけたらいいなと改めて思いました。
 
Yanai