小さなものさし
幸せだと感じる時間の測り方は、
人それぞれ違い、家族によっても異なるかと思います。
“家” というひとつの要素を通して
感じられる幸せの在り方も、
家族で食卓を囲んで何気ない会話を交わす時間から、
心地よい風が家の中を通り抜ける瞬間、
美しい光や景色を眺めてぼーっとする時間、
家族が待つ家に灯りが灯る夜の家の姿も
幸せを感じる時間の一つかなと思います。
また、ついうっかりものを落として凹んだ床のキズや、
小さなお子さまが食べ物を落として
ついてしまった床のシミ、
時とともに少しずつ変化していく無垢床の色合いなど、
30年、40年後、暮らす人と同じだけ歳を重ねて
住まい手に馴染んだ家の姿に、
住み始めた頃とまた違う、“愛着”という愛おしさを
感じていただけるといいな、とも思います。
私は、設計士 としてお客さまとの家づくりを通して
小さなものさしで世の中に目を向けることが
できるようになりました。
大きなものさしで幸せを測っていた頃は
気づくことのできなかった小さな幸せに
目を向け始めると、
人も、ものも、そして自分が過ごしているこの時間も、
こんなにも愛おしいと思う瞬間で
溢れているのだと感じられるようにもなりました。
家づくりを考えるとき、豊かさの基準として
広くて解放感のある家、最新の設備が整った家など、
家の価値観も多様ではあるかと思いますが、
目に見える性能や数値や、
価格だけでは測ることのできない
何にも代えることができない
豊かさもたくさんあるのではないかと思います。
これからも接客から設計まで
より丁寧な対話を重ねながら、
その家に住まうご家族の生き方、
暮らし方に真摯に向き合い、
その家族に合ったものさしで、
誰とも比べられない豊かさを想像しながら
設計できればと思います。
Saito