衝動
2017.2.20
以前、東京の八王子セミナーハウス(吉阪隆正氏設計)で開催された設計合宿に参加しました。
全国から現役の建築家、建築士が60名ほど集まり、広大な八王子セミナーハウスの一部を仮想の敷地と想定し、そこに戸建規模の宿泊施設を設計して、一人ひとり発表するといった内容でした。
恩師である堀部安嗣先生、横内敏人先生、伊藤寛先生から直接指導をしていただきながら、60名の建築士が課題に取り組む環境は、一種独特の緊張感を漂わせていました。
一泊二日の合宿だったので夜は各部屋へ戻り消灯するスケジュールだったのですが、設計課題が思うように進まない私は、深夜にもう一度敷地を確認しようと宿泊施設を出たとき、外の異様な明るさに歩みをとめ、振り返りました。
今でたばかりの宿泊施設の窓という窓から、漆黒の闇へとやわらかな光を放ち、その近寄りがたい光のなか、無心で机に向かう建築士のその姿に魅せられ、得も言われぬ衝動に突き動かされたことを、今でも鮮やかに思い返すことができます。
翌日の発表を終え、私は結果として優秀賞をいただきました。けれども、嬉しい気持ちが強ければ強いほど、心に棘が刺さると言うのでしょうか、心に穴があくと言うのでしょうか、そんな思いも同じように持たざるを得ませんでした。
設計に優劣なんて私はないと思います。
ひとりの建築士が自らの持てる力をすべて出し切りながら、解答のわからないその問いに、にじり寄っていくその全過程を設計と呼ぶことができたなら、それはとても素敵なことだと思います。
ちょうど今あの日のように、キーボードを打つ私の右隣で、あらたな敷地の設計に無心で取り組んでいるひとりの建築士の姿を肌で感じながら、今そう思うのです、あの衝動とともに。
by hatakeyama