仙人掌群鶏図

2018.1.28

初めて伊藤若冲の作品を見たのは、ある日本家屋の床の間に掛けられた掛軸でした。
鶏が一羽描かれただけの小さな水墨画でしたが、薄暗い室内で見た鶏はとても存在感があり、
本当に思わず息を呑みました。
美術館でよく若冲の作品は展示されますが、実際に住宅の中で使用されている作品は、
住宅の雰囲気や空気感を取り込みより生き生きとして見え、とても感動しました。

仙人掌群鶏図(さぼてんぐんけいず)は、西福寺の襖絵として1789年に伊藤若冲により制作されました。
鮮やかな金をバックに鶏たちがバランス良く配置されており、
6枚の襖にはそれぞれストーリー性のある鶏たちの様子が描かれています。
とても写実的で躍動感があり今にも飛び出て動きだしそうで、見ていてドキドキしてきます。
歌舞伎のような浮世絵のような、私が好きな日本の美意識が根付いており、
建築の仕事をしていても参考になる部分が多いです。

そしてひよこの存在。

歌舞伎役者のような親鶏とは対照的に、素朴でかわいらしく描かれています。

このなんとも言えない表情。
堂々としている親鶏のおかげで、ひよこが生き生きしてみえます。

私が若冲の作品の中でも特にこの作品が好きなのは、ひよこの存在がとても大きいです。
ピリッとした全体の構成の中でひよこが描かれることで、微笑ましく感じることができます。
力を入れたり、抜いたり、その描き方やセンスに惹かれます。

ちなみに若冲は仙人掌群鶏図と同時期に水墨画で群鶏図(旧海宝寺障壁画)を残しており、
これもまた素晴らしい作品です。
仙人掌群鶏図と表現方法が違うので、見比べてみると面白いと思います。

by nagayama