2020.10.30

今年は例年に比べて夏の雨量が多く、
梅雨も長かったようです。
 
私は、雨が降ると
牧野義雄という人を思い出します。
明治時代に日本で水墨画を学んだ後、
イギリスで絵を描き続けた画家です。
大学生の時に初めて知ったこの画家は、
改めて調べてみると愛知県出身の方でした。
 

 
雨が風に吹かれて霧となり、
待ち行く人々、街灯、建物を
やわらかく包み込む絵。
雨の降る街がこんなに幻想的に
見えている人がいるのか、
と当時の私には衝撃でした。
 

 
きっと晴れの日には
多くの人が賑わう広場、駅、商店街も
雨が降ると雨粒に光が乱反射して
物の輪郭が曖昧になり、
実際にそこにあるはずなのに、
触る直前でふっと消えてしまいそうな
儚い街並みに変化します。
 
雨の日は下を向いて足早に歩くことが多く
雨の降る街を見ることはありませんでしたが、
この絵を見てから街灯を見つけると
ぼやける明かりを眺め、
遠くの建物の輪郭を視線でなぞるようになりました。
 
雨の日にしか見えない輪郭、
晴れの日にしか見えない輪郭、
夕日に照らされている街の輪郭
 
常に見えているものだけではなく、
その瞬間瞬間に見える景色を
もっと感じられるようなお家が出来れば、
素敵な暮らしが出来るような気がします。
 
私がこの絵を見て
雨の日の街に目が向いたように、
お家作りが暮らし方を見つめる
時間になればと思います。
 
Okada