浅蔵五十吉美術館

2022.2.18

ほとんどの人が知らなくても、
優れた建築物はたくさんあります。
浅蔵五十吉美術館もそのひとつです。
設計は池原義郎氏。
身近な作品だと西部ドームがあります。
 

 
ここの建物の何が素晴らしいのか。
まず建物の規模が丁度良いです。
景観を邪魔しないよう高さを抑え、
山並みに馴染む切妻屋根の外観は、
そこが美術館であることを忘れさせてくれます。
美術館としてはかなり小さいのですが、
その分密度が濃く
細部まで飽きのこない造りになっています。
 

 

まず大きな水盤のある石畳みのアプローチがあり、
アプローチと水盤の物理的にぶつかる部分を
細いスチールで見切り、
隙間を開けて納めています。
そのことにより緊張感のある納まりとなり、
ランドスケープというより
建築に近くなっているように思えました。
アプローチより僅かに水盤を高くしてあり、
表面張力で水盤が浮いているかのように見えました。
水盤と建物のボリュームバランスも絶妙で、
これが小さくなると緊張感が生まれないし
大きくなるとランドスケープ化してしまう。
訪れる人はアプローチだけで
この建築の虜になってしまいます。
 
他にも窓の造りやトイレのサインに至るまで
池原氏による玄人好みの納まりが凝縮されています。
ここまで考えて設計できると設計する側としては
とても楽しいのではないのでしょうか。
羨ましい限りです。
展示されている九谷焼の焼き物も手が混んでおり
見応えのある素晴らしい美術館です。
 

 
出来てから30年近く建っているそうですが、
今でも十分見応えがあります。
是非一度訪れてみることをお勧めします。
 
Nagayama