nuance

2022.3.4

少し前に、刈谷市の美術館へ行ってきました。

展示会場とは少し離れた茶室の金色の床の間に
一つの作品が置かれておりました。
キラキラとしたプリズム柄の掛け軸に
武士がブランコに乗った後姿が描かれており、
それは、場違いの中の違和感にしか
思えませんでしたが、
さらに茶室とはかけ離れた文体で
「ニュアンス」と書かれており、
使い慣れたその言葉について、
作者の意図が知りたく調べてみました。

もともと「nuance」という単語には、
「陰影」という意味が含まれるそうです。
「nu」 はフランス語で「雲(nuage)」 を
指しており、
「ance」 は「〜をすること」と
いった意味を持つため、
これらを組み合わせると
「雲のように行うさま」を表しているとのこと。
 

すなわち雲は視界を遮り曖昧な形に見せ
さらにうつり変わるものですから、
「はっきり分からない物や事」を指し、
これを分り易く言うと
「言外の話し手の意図」や
「色やトーンの微妙な差異」
という雰囲気を示す使い方をするようになったと
考えられているそうです。
 

お家づくりにおいて、
お施主さまとの対話の中で生まれる
微妙な差異の想いをくみ取り、
具現化するさまが我々の役目であるならば、
もしかしたら、言外の所作からもその手掛かりを
受取れる技量を身に付けることが、
私にとっての設計士の道であると
気付かされる作品となりました。
 

Kimura