尊さの設計

2022.8.5

大学で建築を学んでいた頃、
設計には必ず理由が必要で、
なぜこういうデザインにしたのか
しっかりと言語化して説明しなければならないことを
教わりました。
口下手な私は設計の勉強だけでなく、
言葉で伝える能力も身に付けなければならず
毎回大変な思いをしておりました。
ところが、大学の卒業設計の講評会で
ある先生がポツリと一言。
「だけど本当に良い空間っていうのは
理由なんていらないんだよ」
その言葉がとても印象的で、私の設計が
変わるきっかけになったかのように思えます。
 
先日、1年半程前にお引渡しをした住宅に
お邪魔しました。
吹き抜けの大きな壁面に、
太陽の光や中庭に植えたアオダモの枝葉が
映し出されておりました。
そよ風により枝葉が揺れる度に
壁面に映し出された影も揺れ、
太陽の角度によって影が変化していきます。
 

 
写真で見るより実際の空間はもっと柔らかくて、
雲に隠れては光が弱くなったり強い光になったり、
まるで生き物がこの家の中で
呼吸をしているかのようでした。
家が生きているのだと感じて、
とても尊い気持ちになりました。
 
その情景を見ていて、
ふと学生の時の話を思い出しました。
少しだけ言葉の意味がわかった気がします。
 

 
Nagayama