景色と窓
先日とある住まいのお引き渡しを
させていただきました。
北一面に自然豊かな景色が広がる住宅地の一角に
建つ住まいです。
土地は不整形で、
南には隣の住宅が直ぐ近くに迫る土地でしたが
更地の状態の土地を見た時は、
そんなことは忘れてしまうくらい
目の前に広がる景色が魅力的な土地だった、
ということを今も覚えています。
当初は要望にはなかったのに
「外の景色を楽しめるような部屋が欲しい」と
お施主さまに思わせるほど。
土地を見る時には
どこに窓を計画するかを考えることが多いですが
この場所に設計するからには、
この景色が失われるようなことはしてはいけない、と
そんなことを思いながら
設計をさせていただきました。
![](https://neie.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/1_sp.jpg)
家の中と外をつなぐ窓は、そこにある景色を意識的に
認識させる役割があるように私は思っています。
普段は何気ない街や風景も窓を通すことによって
美しい景色だったことに気づいたりします。
いつも目の前に広がっていた自然豊かな風景も
窓があることによって作品の様に思ったりもします。
だからこそ窓の位置や大きさ、高さは
念入りに検討しなければならず
また、どの部屋からどのような景色が
見えるのかもとても大切だと思います。
![](https://neie.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/2_sp.jpg)
こちらの住まいでは自然豊かな風景が
北側に広がっていることもあり
南に大きな窓を設けるという常識的な考えではなく
最初に土地を見て感じたことに対して、
素直に且つ土地に馴染むように
北側に大きな窓をご提案させていただきました。
完成するまではどんな風に見えるだろうかと
楽しみであり、不安も少々ありましたが
完成した住宅には、これで良かったと思わせてくれる
景色が窓一面に広がっていました。
![](https://neie.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/3_sp.jpg)
なによりお施主さまから
「北側に大きく開いて本当に良かった」
と言っていただけたことが
設計士としての役割を果たせたような気がして
ほっとしました。
住宅の設計は、家の中のことに
意識が向いてしまうことが多いような気がします。
しかしながら今回のご計画で、土地・風景が持つ力を
無視できないということに気付き、
このような素敵な機会を頂けたことに感謝しながら、
これからも素敵な景色を残せるような
設計をしていきたいです。
Mori