景色と窓

2023.12.8

先日とある住まいのお引き渡しを
させていただきました。
北一面に自然豊かな景色が広がる住宅地の一角に
建つ住まいです。
 
土地は不整形で、
南には隣の住宅が直ぐ近くに迫る土地でしたが
更地の状態の土地を見た時は、
そんなことは忘れてしまうくらい
目の前に広がる景色が魅力的な土地だった、
ということを今も覚えています。
 
当初は要望にはなかったのに
「外の景色を楽しめるような部屋が欲しい」と
お施主さまに思わせるほど。
 
土地を見る時には
どこに窓を計画するかを考えることが多いですが
この場所に設計するからには、
この景色が失われるようなことはしてはいけない、と
そんなことを思いながら
設計をさせていただきました。
 

 
家の中と外をつなぐ窓は、そこにある景色を意識的に
認識させる役割があるように私は思っています。
普段は何気ない街や風景も窓を通すことによって
美しい景色だったことに気づいたりします。
 
いつも目の前に広がっていた自然豊かな風景も
窓があることによって作品の様に思ったりもします。
 
だからこそ窓の位置や大きさ、高さは
念入りに検討しなければならず
また、どの部屋からどのような景色が
見えるのかもとても大切だと思います。
 

 
こちらの住まいでは自然豊かな風景が
北側に広がっていることもあり
南に大きな窓を設けるという常識的な考えではなく
最初に土地を見て感じたことに対して、
素直に且つ土地に馴染むように
北側に大きな窓をご提案させていただきました。
 
完成するまではどんな風に見えるだろうかと
楽しみであり、不安も少々ありましたが
完成した住宅には、これで良かったと思わせてくれる
景色が窓一面に広がっていました。
 

 
なによりお施主さまから
「北側に大きく開いて本当に良かった」
と言っていただけたことが
設計士としての役割を果たせたような気がして
ほっとしました。
 
住宅の設計は、家の中のことに
意識が向いてしまうことが多いような気がします。
 
しかしながら今回のご計画で、土地・風景が持つ力を
無視できないということに気付き、
このような素敵な機会を頂けたことに感謝しながら、
これからも素敵な景色を残せるような
設計をしていきたいです。
 
Mori