穏やかなひととき

2024.12.6

学生時代を京都で過ごした私はお寺や神社、
茶室など日本文化に触れる機会が多くありました。
その時に感じた空気感、居心地の良さ、美しさは
今でも鮮明に覚えており、とても素敵な記憶です。
 
友人と嵐山に訪れた際、
道端で出会った方があるお寺を紹介してくれました。
「この時期はあまり人が来ないけど、とても苔が
きれいなお寺だよ。」と。
 

 
「祇王寺」
平家物語に登場したことで知られる尼寺です。
昔の往生院の境内にあり、往生院は法然上人の門弟
良鎮によって創建されたと伝わっています。
広い寺域を占めていた往生院は荒廃し、尼寺として
残り、後に祇王寺と呼ばれるようになりました。
 
小さな門をくぐり、
参道を歩くと中央に苔庭が見えます。
 

 
その日は冬の曇り空。
木々は葉をつけておらず、
光もあまり差し込んできませんでした。
その中でも青々とした美しい苔、
人の手が加わりながらも
のびのびと枝を大きくした木々、
うっそうと生い茂る竹林。
自然と共存したお寺。そんな印象を受けました。
 
苔庭の奥にひっそりと佇むかやぶき屋根の草庵には
懐かしさを感じます。
草庵からぼーっと苔庭を眺める時間は、
ほっと心を落ち着かせてくました。
 

 
「穏やかなひととき」
わたしは日本建築に触れるたびにそう感じます。
 
お施主さまが住まう家もそんな空間であってほしい。
そんな空間をつくりたい。
そのヒントが日本建築には隠れていました。
 
Uda